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2025年07月22日号 (第546)

株の評価に関して総則6項の適用で国が逆転勝訴

 みなさん、こんにちは。梅雨があったのかよくわからないまま、例年の梅雨明けの時期を迎えました。水不足が懸念されており、農作物の生産に影響が出るかもしれません。コメの値段が問題になっている中で、まだまだ試練が続きそうです。

 さて今回は、6月19日の「総則6項の適用についての高裁判決」についてご紹介します。

総則6項とは

 相続税法22条では、相続があった場合の財産の価額について「その財産の相続時における時価による」と定めています。時価といっても、具体的にいくらを指すのかという問題があるため、「財産評価基本通達」の中で具体的な計算方法が定められています。

 通常、財産評価通達に従って評価を行えば問題になることはありません。しかし、財産評価通達の総則6項には、以下の定めがあります。

6 この通達の定めによって評価することが著しく不適当と認められる財産の価額は、国税庁長官の指示を受けて評価する。

 「著しく不適当と認められるか」については、最初の段階では税務署が判断しますが、それを不服として訴訟が起こることもあります。令和4年4月19日最高裁では国が勝訴し、令和6年8月28日の高裁判決では国が敗訴するなど、実務においては非常に難しい問題となっています。

今回の訴訟の論点

 今回の事例は、平成25年8月に被相続人が約36億円の増資払い込みを行い、同年10月に相続が発生しました。10月の相続時、株式の評価を財産評価通達を用いて計算すると17億円弱になってしまいました。

 つまり8月の段階で36億円の預金だったものが、10月には株式という形態になり、その評価額が17億円弱になってしまうという極端な事実がありました。預金の動きだけみれば、被相続人の通帳から会社の通帳へ移動させただけであり、財産の価値が減少するような事実は何もありません。

 実務的には、非上場株式について財産評価通達に従って計算することは当然であり、普通は問題になりません。しかし、今回のような極端な結果が生じた場合に「総則6項」の問題が生じ、地裁では納税者が勝訴したものの、高裁で国が勝訴するという結論となりました。

裁判所の判断材料

 今回の事例では、8月に株式の増資払い込みを行い、翌月9月に配当したという事実がありました。詳しい説明は省略しますが、高裁はこれを「株式保有特定会社」と「比準要素1の会社」に該当しないようにするためのスキームだと判断しています。

 また判決の中で、証券会社との相談内容が相続税対策のみであったことにも踏み込み、納税者が税負担の軽減を意図して新株発行を行っているなどと判断しました。

 判決が出る前は、非上場の株式について、財産評価通達を用いないで計算する方法はないのではとの疑問もありましたが、裁判所は新株発行をしなかった(預金の)状態で評価しています。

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